指導読む目安 6分
家で練習してこない生徒に、何をどう頼むか
叱るか褒めるかで迷う前に、決めておいたほうがいいことがあります。集中の続かない子と、進度がばらばらのクラスへの手当ても合わせて書きました。
公開 2026年7月27日最終更新 2026年7月27日著者 HATOP編集部
この記事の結論
練習してこない生徒の多くは、やる気がないというより、家で何をするのかが決まっていません。宿題の量を変えるより先に、いつ、どこで、何分、どこまでやるかを一緒に決めたほうが早く動きます。叱るかどうかを考えるのは、そのあとで間に合います。
練習してこない生徒は、やる気がないのですか?
やる気という言葉でまとめてしまうと、手の打ちようがなくなります。決まっていないのか、難しすぎるのか、何のためか分かっていないのか。どれなのかで、打つ手が変わります。
「やる気がない」は、原因の名前ではありません。中身を見ないまま声のかけ方だけ変えても、次の週もまた同じことが起こります。
| 中身 | 本人に出るサイン | 手当て |
|---|---|---|
| 決まっていない | 「忘れてた」と言う。やる日が毎週ばらばら | いつ、どこで、何分やるかを決める。量は減らさなくていい |
| 難しすぎる | 最初の1行で止まっている。ノートが白いまま | 課題を1段階下げる。教室で最初の1回を一緒にやってから帰す |
| 何のためか分からない | やってはいるが雑になる。「これ何のため?」と聞いてくる | この練習がどこにつながるかを、次の目標と結び付けて一言で伝える |
聞き方は、「なんでやってこないの」ではうまくいきません。「家でやろうとしたとき、どこで止まった?」と聞くと、たいてい3つのどれかが返ってきます。
家での練習は、どう決めれば続きますか?
続いている生徒は、いつ、どこで、何分、どこまでやるかが決まっています。1回3分から始めて、量ではなく回数を数えるほうが定着します。
いつ
曜日と時刻を決めるより、家の生活の順番にくっつけるほうが守られます。夕ごはんの前、歯みがきのあと、といった決め方です。
どこで
場所を1つに決めます。ツールを出す手間が1つ減るだけで、回数がはっきり変わります。
何分
1回3分から始めます。長い時間を決めると、取りかかるまでが重くなります。
どこまで
「練習する」ではなく、終わりの見える形にします。4小節を3回、10問だけ、といった書き方です。
いつ:夕ごはんの前
どこで:リビングの机
何分:3分
どこまで:8ページの3問だけ
できた日は、ここに丸をつけてください。
丸の数は、次のレッスンの最初に一緒に数えます。数えてもらえると分かるだけで、回数は増えます。
保護者に頼むのは、声かけではありません
「練習するように言ってください」と頼むと、家では催促になります。催促は親子げんかになり、そのうち教室のせいにされます。お願いするのは1つだけにしておくほうがいいです。3分ぶんの時間と場所を空けてもらうこと、それだけです。
叱るのと褒めるのは、どちらがいいのですか?
どちらでもなく、見えたことをそのまま言うのが基本です。叱る場面は、危ないことをしたときと、人を傷つけたときの2つに決めておくと迷いません。
褒めても伸びない、叱っても伸びない。どちらの相談も、言葉が評価になっている点では同じです。評価ではなく、見えたことを言葉にしてみてください。
| 場面 | 避けたい言い方 | 言い換え |
|---|---|---|
| できたとき | すごいね、天才だね | 3回目から、指が止まらずに動いたね |
| できないとき | ちゃんとやりなさい | ここで手が止まるね。ひとつ前に戻してみようか |
| やってこないとき | また練習してないの | 今週は何回できた?0回なら、時間を決め直そう |
集中が続かない子や、レベル差の大きいクラスは、どう進めますか?
集中が切れるのは、45分をひと続きにしているからです。中身を割って、体の動きが変わる場面を挟むと持ちます。レベル差のほうは、課題を1つにしてゴールだけ3段階に分けると、一人でも回せます。
集中が続かないとき
45分を通して集中させようとするから続きません。中身を3つに割って、体の動きが変わる場面を挟むと持ちます。
| 時間 | 中身 | ねらい |
|---|---|---|
| 最初の10分 | 毎回まったく同じことをする | 始まりの合図になる。考えずに入れる |
| まん中の20分 | その日の新しいこと | いちばん集中の要る内容をここに置く |
| 最後の15分 | できることを通してやる、または遊びの要素を入れる | できた状態で終われる |
レベル差が大きいとき
生徒ごとに別の課題を出すと、先生が3人分に分かれてしまいます。課題は1つにして、分けるのはゴールのほうです。
- 共通の課題を出します。この4小節、この10問、というように全員同じにします。
- ゴールを3つ書いておきます。ゆっくり最後まで、間違えずに最後まで、速さをつけて最後まで、といった並びです。
- 早く終わった生徒には、下の段の生徒を見てもらいます。教えることが、その子の練習にもなります。
楽しく学ぶことと、上達は両立しますか?
両立は順番で作れます。できるようになったことが本人に見えている状態が、そのまま「楽しい」の中身になります。
楽しくやらせたい家庭と、結果を出してほしい家庭が同じクラスにいると、方針が揺れます。揺れると、どちらの家庭からも不満が出ます。先に決めて、入会のときに渡しておくほうが穏やかに済みます。
この教室は、続けられることをいちばん大事にします。
コンクールや検定は、出たい人だけが出ます。出ない生徒が不利になることはありません。
半年に1回、いまできることを記録して、本人と保護者にお渡しします。
効くのは3行目です。上達は、日々のレッスンの中では本人に見えません。半年前の記録と並べて、はじめて見えます。そこで、楽しさと上達がつながります。
記録に残すもの
- できるようになったことを1行
- いま練習していることを1行
- 次の半年でできそうなことを1行
- 音や動きが残せるものなら、短い動画を1つ
よくある質問
- 練習してこない生徒に、宿題を減らしてもいいですか?
- 減らしてかまいません。量より先に、回数が続くことのほうが大事です。週5回3分まで落として、回数が戻ってきてから量を戻してください。
- 発表会やコンクールに出たくない生徒には、どうすればいいですか?
- 出るかどうかを選べるようにして、出ない生徒が不利にならないことを先に伝えておいてください。人前で演奏したり演武したりする経験は、教室の中で少人数を相手にしても作れます。
- レベル差のあるグループレッスンを、一人で回せますか?
- 課題を1つにして、ゴールを3段階に分ければ回せます。生徒ごとに違う課題を出すと、先生が分裂して、結果的に全員の待ち時間が増えます。
- 「うちの子はやる気がない」と保護者に言われたら、どう答えますか?
- やる気の話にせず、家でやることが決まっているかを一緒に確かめてください。いつ、どこで、何分、どこまでの4つのうち、欠けているものを埋める提案にすると、家庭のほうも動きやすくなります。
この記事を書いた人
HATOP編集部
月謝制の個人教室のための予定表サービス「HATOP」運営
空手道場、ピアノ教室、スイミング、学習塾など、先生が一人で切り盛りしている教室のための予定表サービスを作っています。ここに書いているのは、その設計のなかで整理してきた教室運営の型です。
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